2014年度 活動レポート 第178号:北九州市立大学国際環境工学部

2014年度活動レポート(一般公募コース)第178号

環境課題の解決に向けて大連理工大学との共同研究を推進

北九州市立大学 国際環境工学部 門上 希和夫

さくらサイエンスプログラム交流事業により、2015年1月19日~2月1日の日程で中華人民共和国大連市の大連理工大学環境学部の陳景文教授の研究室(School of Environmental Science & Technology, Dalian University of Technology)から10名の学生と教員2名が来日しました。

我々の研究室と陳教授の研究室とは、4年前から中国の水環境の微量有機汚染物質の実態把握と生態系への影響評価に関する共同研究を実施しています。

今回の交流は、次のような目的でした。

(1)我々が開発した1300種の化学物質の網羅分析法をトレーニングする。
(2)世界最高の環境研究機関の1つである国立環境研究所を訪問して我が国の最新環境研究を紹介する。
(3)激甚な公害を克服し、現在は循環型社会、持続可能な社会の創造に取り組んでいる北九州市を自分の目で見て、環境保全の大切さを再認識してもらうことです。

また、両研究室の相互理解を深め、今後の共同研究に活かすための合同研究発表会も開催しました。

滞在期間の前半では、半揮発性物質と極性物質向けの2種類の網羅分析法を技術移転しました。その後に合同研究発表会を開催し、陳教授の研究室から10題、我々の研究室から6題の発表を行い、技術移転で行った分析の結果も発表しました。

北九州市内の環境関連施設視察では、資源リサイクル事業の集積地である北九州エコタウン、PCB廃棄物処理施設、北九州スマートコミュニティーなどを視察しました。
期間の最後は、国立環境研究所に移動して、最先端の環境研究の視察に加え、環境リスク研究センターにおいて有害物質の生態影響を試験する2種類のバイオアッセイ手法を1日体験しました。

そこでは、思いもかけず陳教授の研究室と環境リスク研究センターとで化学物質の毒性評価に関する共同研究が開始される可能性が開けました。以上のように、今回の招聘で多くの学生に北九州市や日本の最新の環境研究を紹介し、日中学生同士の相互理解を深め、新たな共同研究の芽が出たことなど、大きな成果が得られました。

化学物質の網羅分析の実習
我々の研究室で開発した2種類の網羅分析法を2班に分けてトレーニングしました。

自動販売機解体工場の視察
北九州エコタウンを訪問し、自動販売機解体工場を視察しました。

北九州PCB廃棄物処理施設(中間貯蔵・環境安全事業(株))の視察
全員有害物質問題に関心が高く、3時間を超す視察の間、完全密閉式のPCB処理に専門的な質問が多く出ました。

合同研究発表会(Joint Workshop between DUT and UOK on Micro-pollutants)の開催
我々の研究室から6題、大連理工大学から8題の研究発表があり、終日発表と議論が続きました。

修了証授与式
合同研究発表会終了後、本学環境工学部の龍学部長から「さくらサイエンスプログラム修了証」が授与され、本学発表者を含め全員で記念撮影。

北九州市環境ミュージアム視察
激甚な公害克服の歴史から持続可能な社会の創造まで、北九州市の環境への取り組みを学びました。

アインシュタイン夫妻が宿泊した旧門司三井倶楽部をバックに記念撮影
休日には、門司港レトロや小倉城を観光し、美味しい北九州の食事を満喫しました。

国立環境研究所の視察
循環廃棄物研究棟を視察し、廃棄物焼却炉を用いた研究内容の説明を受けました

国立環境研究所でのバイオアッセイ手法の研修
インビトロ、インビボの2種類のバイオアッセイによる化学物質の毒性評価手法の研修を受けました。

実質12日の滞在でしたが、当初の目的(網羅分析の技術移転、日本の高度な環境研究や環境対策技術の視察、国立環境研究所でのバイオアッセイ手法研修など)を達成し、多くの経験・知識を得ることができたと思います。今回の訪問を機会に、本学や国立環境研究所との共同研究が、今後益々発展して大きな成果が出ることを期待しています。

また、帰国後に送られてきた感想文を読むと、北九州市を始めとした日本の環境の素晴らしさ、人々の礼儀正しさや優しさ、環境保全意識の高さなど、日本人にとって普通と思うことに感動したとのコメントが多く寄せられていました。日本人や日本の生活を知って頂いたことも、今回の招へいの大きな成果だったようです。

最後に、交流の機会を与えて下さったJST、および視察先の皆様に心よりお礼を申し上げます。