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活動報告(公募計画コース) 第154号

中国科学技術大学科技考古実験室の修士・博士課程の学生が研修 その1

東京藝術大学大学美術館
代表:原田一敏(大学美術館教授)
文責:芹生春菜(大学美術館助教)

 東京藝術大学大学美術館では、10月20日(月)~27日(月)の8日間にわたり、中国科学技術大学科技考古実験室の修士・博士課程の学生9人を迎えて研修を行いました。

 学生たちの専攻する「科技考古」とは、科学技術の知識をもとに考古遺物や美術作品の素材、技法、環境などの分析研究を行い、作品の理解や保存修復に寄与する学問です。いわば自然科学と人文科学の境界に位置する分野で、化学、工学、歴史、文化といった幅広い知識の涵養が求められます。
 研究対象も多岐に渡るため、東京藝術大学大学美術館では事前に個々の研修生の専門の聞き取りを行い、なるべく各人の研究に添うようにカリキュラムを組み立て、また芸術系の大学ならではの特徴ある研修となるように努めました。

2014年10月20日(月)到着

 本日より8日間の研修がスタートします。
 飛行機は遅れましたが参加者全員無事に到着。皆さん初めての日本、初めてのスカイライナーです。


京成成田空港駅のホームで

2014年10月21日(火)藝大での講義・見学

 本日より本格的な研修のスタートです。
 午前は大学美術館内の会議室でオリエンテーション。その後、まずは大学美術館の内部を見学しました。
 大学美術館は本学の前身である東京美術学校の開校以来、約130年間に渡って収集されたおよそ3万件近くの収蔵品を誇ります。この日は、ちょうど終了したばかりの「平櫛田中コレクション─つくる・みる・あつめる―」展の会場を見ることができました。本学でも教鞭をとった著名な彫刻家、平櫛田中(1872-1979)が収集し本学に寄贈した「田中コレクション」の展示です。

 日本の近代彫刻をまとめて見る機会はおそらく初めての皆さんですが、日本語で書かれた解説を漢字を頼りに熱心に読んでいました。続いて、開催中の「台灣の近代美術-留学生たちの青春群像(1895-1945)」展も見学。研修生の中に清代末期西洋画の材料分析を専門とする学生もいて、興味を引いた様子でした。また、会場構成や照明などの展示効果に興味を示す学生もいました。

 午後からは講義と工房見学です。
 まず講義(1)は、原田一敏教授による日本の金属工芸のレクチャー。実物の作品を前に、日本の金工の特色について話を聞きました。白手袋が配られ作品に触れることも許されたので、参加型の楽しい授業となりました。
 今回の閲覧は、現代作家から遡って江戸時代までの比較的新しい時代の作品が中心です。器物の表面に美しい図柄のある作品を見ながら「合金の比率や技法による質感の相違を巧みに用いて、絵画的表現を試みることが日本の金工の特色の一つである」との解説には皆興味津々。「この赤い部分の合金の比率は?」「この白い部分の材質は?」などと質問が活発に飛んでいました。


金工の閲覧授業(原田教授)

 講義(2)は、黒川廣子准教授による漆芸のレクチャーです。研修最終日に見学予定の展覧会「存星─漆芸の彩り」(五島美術館)のテーマに合わせ、当館所蔵の中国漆器(漢代の楽浪漆器、明代の屈輪合子、明清代とされる填漆の大籠)を閲覧しました。
 耳慣れない日本風の作品名も、蔵品目録で確認しながらノートを取ります。専門がら保存修復に興味のある学生が多く、保存状態や修理暦についても質問が出ていました。研修生たちは拡大鏡を使って、塗り重ねた色漆の層や魚々子地の細部などを熱心に観察していました。


漆工の閲覧授業(黒川准教授)

 講義の後は、本学美術学部の文化財保存学保存修復油画研究室、工芸科の鍛金・彫金・鋳金の各研究室のアトリエを見学しました。

 文化財保存学専攻の油画研究室では、光学調査に用いる機器類や目下作業中の修復現場を見せていただきました。東京大学安田講堂の壁画(小杉未醒作)は現在建物改築中のため取り外され、この研究室へ運び込まれて修復が行われています。訪れた日はちょうど媒材を染みこませて画面に貼り付けた紙の除去中で、修復作業を間近で見る貴重な経験になりました。


修復中の東大安田講堂壁画(木島隆康教授=左)

 次に、古代壁画墓を専門とする学生がいるということで、特別に修復済みのバーミヤーン壁画片を出していただきました。これはかつて政情不安のアフガニスタンから流出し、日本で保護され、当研究室で修復処置が施されたものです。作品の歴史的背景とともに、修復処置の手法や仕上げの額装についても皆興味を持ったようでした。


バーミヤーン石窟壁画片

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