2022年度 活動レポート 第33号:千葉大学

2022年度活動レポート(一般公募プログラム)第033号 (Bコース)

次世代シーケンス技術を利用したパラグアイにおける人獣共通感染症の統合的理解

千葉大学大学院医学研究院感染生体防御学
准教授 彦坂 健児さんからの報告

 2022年9月26日から10月9日の14日間、共同研究者である帯広畜産大学のアコスタ准教授よりご紹介いただいたパラグアイの獣医若手研究者6名を受け入れ、招へいプログラムを実施致しました。招へいの主な目的は、現在準備を進めている国際共同研究「パラグアイにおける人獣共通感染症を引き起こす病原体叢の解明」に関する研修・対面での打ち合わせです。

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千葉大学医学部に到着

<9月26日>

 早朝、参加者6名がパラグアイより成田空港に到着しました。千葉大学大学院医学研究院の感染生体防御学ラボ(彦坂准教授所属)を見学し、寄生性原虫の培養法や検出方法の説明を受けました。パラグアイでは、診断目的で原虫の検出は行っていますが培養システムの確立はなされていないため、メモや動画をとりながら大変興味深く話を聞いていました。

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千葉大学医学部の彦坂准教授による施設紹介

<9月27日~28日>

 パラグアイ研究者による所属施設(大学)や自身の研究テーマについて各々が自己紹介した後、彦坂准教授が実際の原虫サンプリングの方法や研究に使用するDNAの抽出法についての講義を実施しました。その後、パラグアイでの共同研究に関する打ち合わせを実施いたしました。

 翌日は目黒寄生虫館を訪問見学いたしました。ここでは、研修参加者が日本で見られる寄生虫やその歴史について興味をもち、いくつかの質問を受けました。千葉への帰路の途中に在日パラグアイ大使と面会する機会を急遽得ることができ、国の感染症対策や家畜疾病のお話を聞くことができました。その後は、希望者のみ日本の動物病院の施設見学をいたしました。今回のプログラムの参加者は全員獣医師でしたので自国との設備の違い等を学べました。

<9月29日~10月1日>

 千葉大学で原虫培養方法の施設見学、千葉大学感染生体防御学の坂本特任助教による原虫の遺伝子組換え技術についての講義および関根特任教授による次世代シーケンサー技術の原理と使用方法の概要と機器見学をしました。その後、これまでの研修の総括、ディスカッションを行いました。

<10月2日~5日>

 京都に移動し、京都大学および京都府立医科大学の研究施設を訪問いたしました。京都大学ヒト生物学高等研究拠点(ASHBi)にて、山本准教授より施設のシステムと次世代シーケンサーを用いたシングルセル解析に関する研究を紹介していただきました。

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京都大学ヒト生物学高等研究拠点にて山本准教授と

 京都府立医科大学においては同大学大学院医学研究科の感染病態学所属の村越助教による寄生性原虫とウィルス感染について研究を紹介していただきました。

<10月5日~8日>

 千葉大学にて日本獣医生命科学大学の小山非常勤講師による日本の獣医臨床における感染症対策に関する講義を実施いたしました。その後、パラグアイ研究者による研修成果発表会を行いました。各々が大変意欲的に成果を発表し、今後の抱負を熱く語ってくれました。これからの研究活動を進める上で大きな財産になったと思います。また、今後、共同研究の柱となるパラグアイにおける人獣共通感染症を引き起こす病原体(特に寄生虫)に関する打ち合わせをしました。今まで、Web上での打ち合わせのみでしたが、実際に顔を合わせての打ち合わせで今後の研究が大きく前進することになりました。対面での議論の重要性を実感しました。

 最後に研修修了証授与式を実施し、本プログラムを修了といたしました。それぞれの終了証を手に記念撮影をいたしました。パラグアイの獣医師は博士号(Ph.D)を取得できる大学が自国にないため、若手研究者の育成には日本からの援助を絡めての自助努力が必須となります。今回の研修は、パラグアイの獣医研究者にとって大きな一歩となることと確信しております。それぞれの研修成果を胸に10月9日、成田空港より帰国の途に就きました。

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それぞれ修了証を手に記念撮影