2021年度 活動レポート 第25号:広島大学

2021年度活動レポート(一般公募プログラム)第025号 (代替オンライン)

インドネシア・台湾と海洋生物分野でオンライン交流

広島大学大学院 統合生命科学研究科附属臨海実験所からの報告

 2020年度JSTさくら招へいプログラム交流事業に採択され,海洋生物分野における日本の先端科学について学ぶ交流事業というタイトルで、準備を進めたが、新型コロナ感染症の影響受け、2021年度に持ち越し、最終的に代替オンライン交流計画として、2021年12月2日および3日の2日間、広島大学大学院統合生命科学研究科附属臨海実験所にて実施した。参加機関としてインドネシア共和国より国立イスラム大学マラン校、同スラバヤ校、台湾より国立中興大学が参加した。オンラインということで、各機関から参加希望者の増員を要望され、当初インドネシア12人、台湾6人の計18名から、インドネシア66人、台湾24人の計90人と大幅に増員して実施した。この他にもインドネシアからオブザーバーとして、国立イスラム大学の他校、7校より30人もの参加者を受け入れ、今後の国際交流発展に貢献した。

 昨年度のオンライン交流経験を活かし、ディスカッションで要望があった、臨海実験所のプロモーション映像の作成を行い、本事業の中で使用した。同時に、さくらサイエンス事業のプロモーション映像も活用し、さくらサイエンス事業に関する紹介と説明も行った。インドネシアからの参加者が多数を占めるので、開始時刻や休憩時間等、インドネシアを基準として実施した。

 初日、まずは臨海実験所に関する説明を映像やスライドで紹介。その後、各参加機関の代表より、新型コロナ感染症の現状、並びにワクチン接種等の説明をしてもらい、アジア諸国と日本の現状に関して情報交換を行った。インドネシアは、現在も大学への入校はなくオンラインのみでの活動に制限されているが、台湾は、マスクは着用しているものの特に制限はないようだった。ワクチン接種も既に2回目が終了しているようだったが、ワクチンの種類に関しては日本とは異なる状況であった。

 その後、愛媛大学の高田裕美准教授による「ウニ胚の初期発生と形態形成」の特別講義を1時間受講し、棘皮動物の初期発生における原腸陥入の詳細な機構や、それにかかわる色素細胞との関係性について詳細に学んだ。午後のセッションでは、海産無脊椎動物のホヤを用いたゲノム編集実験を演示した。具体的には、生きたホヤを解剖し、卵と精子を取り出すところから始め、ホヤの色素細胞の形成に重要なチロシナーゼ遺伝子と脊索形成に重要なブラッキュリー遺伝子を電気穿孔法でノックアウトするというところまでを見せ、翌日まで発生させてその結果を見ることにした。最後は、実験に関する質疑応答を行い終了した。

オンライン交流の様子(初日)

 2日目の12月3日は、さくらサイエンスプログラムに関する説明を映像やスライドで実施し、その後、昨日演示した実験結果の観察を行った。結果、正常発生胚と比べて、チロシナーゼ遺伝子をノックアウトした胚では色素がなくなっている個体が観察され、またブラッキュリー遺伝子をノックアウトした胚では、尾が短くなったり曲がった個体が観察され、無事成功した。その後、山口大学の北沢千里准教授による「棘皮動物の発生と進化」に関する特別講義を1時間受講し、ウニの種による発生様式の違いや左右極性の形成され方の違い、ヒトデの発生様式の違いと再生能の違いなどに関して学んだ。

 午後の部では参加機関全員の自己紹介を実施した。今回日本に来られないのが残念ではあったが、オンラインでも皆参加でき喜んでいた。その後、休憩を挟み、最後のセッション、将来的な共同研究やJSTさくらサイエンスに関しての議論を実施した。各大学が、今後海洋生物学を中心とした共同国際会議などの共同開催に関する提案や、学生や教員の相互交流に関して、活発な議論がなされた。

 オンライン交流が今回2回目で、かなりスムーズに実施できるようにはなったが、やはり招へいしての交流事業が望まれる。早くパンデミックが落ち着くことを願ってやまない。

集合写真